Petrarca, F., Canzoniere

202


この身を燃やし苦しめる炎は,
美しく澄んだ滑らかな生ける氷から生じ,
我が血管を乾上らせ心臓を絞りつくして,
そうと判らぬままに私は滅び去っていく.
4


死は,さながら怒れる天が雷鳴を轟かし
獅子が吼えるように,攻撃の手を振りかざし,
逃げゆく我が生を追い詰めていく.
私は恐怖に満ちて震え言葉を失う.
8


願わくは「慈悲」と「愛」とが一緒になって
私の支えとなり,二本の柱として
疲れ果てた魂と死の一撃との間に立ってほしい.
11


だが私にはそれが信じられず,甘美な敵たる
あの婦人の貌にその兆しを見ることもない.
その咎は彼女ではなく,私の悲運にこそあるのだ.
14


COM. ―― 1. この身を燃やし苦しめる炎:恋の炎. 2. 生ける氷:ラウラのこと. 7. 逃げゆく我が生:Cf. Rvf. 30, 13-4. 9. 「慈悲」と「愛」:詩人がラウラに求めるもの. 12. それが:そのような「慈悲」と「愛」が将来に示されるか否かが.

2017/07/13


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