M. Tvllivs Cicero, Epistulae ad Atticum

I 11


67年8月 ローマにて
キケローからアッティクスへ


 [1]以前にも私は自分の意志で行動していたし,君の二通の手紙が同じ考えを目指して実に念入りに書かれていたのでその後大いに発奮した次第だ.それに加えてサッルスティウスも,私が心を尽くして君とルッケイウスのかつての友好関係を修復するように絶えず励ましをくれている.だが,あらゆる手立てを講じたけれども,彼が以前君に対して持っていた気持ちを取り戻すことが出来なかったばかりか,実を言えばその気持ちの変化の原因さえも聞きだすことが出来なかった.たしかに彼は例の仲裁のことをやたらに持ち出してくるし,君が此方にいたときに彼の気を害したことも私は知っているが,むしろそれ以上に彼の心に根ざしている何かがあるに違いない.そしてその何かを取り除くには君の手紙や私の仲介よりも,君が実際に来て言葉だけでなくその顔をも見せてあの友人から取り除いてやる方が容易かろう――もちろん君がそこまでするねうちがあると考えるならばの話だが.君が私の言葉に耳を傾け,自分の人柄に見合った振舞を望むなら,きっとそう考えてくれるだろう.以前に彼は私の言うように従ってくれると期待している旨私が手紙で知らせたのに,なぜ今になってその自信をなくしたような素振りを見せるのかいぶかしく思わないでほしい.私の目には彼の気持ちが信じられないほどますます頑固になり,この怒りのために揺るぎないものとなっているように見えるのだ.だが,君が来てくれれば,これらも解消されるだろうし,さもなくば両者のうち責任のある方にとって厄介なことになるだろう.
 [2]君の手紙にはもう私が当選したと思っている旨書かれていたが,現今のローマでは立候補者ほどにありとあらゆる不正に苦しめられているものは何もなく,選挙がいつ在るのかもわからない状態だということを知ってもらいたい.しかしこれらのことはピラデルプスから耳にできることだろう.
 [3]それから我がアカデーミーアのために準備立ててくれたものを,なるべくはやく送ってもらいたい.あの場所を使うのはもちろんそれを想像することもまた驚くほどの喜びなのだ.また君の書物を誰かに渡してしまわないようにしてほしい.それらは君が手紙で知らせてくれたとおりの仕方で我々のために取っておいてくれ.それらへの熱望に私はすっかり捕らわれてしまっている.それに引き換え他のことには嫌気が差しているのだ.君が離れたときと比べると,それらのことが実に僅かの時間で信じられないほど悪くなってしまったのを君は目の当たりにすることだろう.

COM. ―― 1. 行動していた:アッティクスとルッケイウスの関係修復のために. サッルスティウス:Cn. Sallustius. キケローの友人. 2. 我がアカーデミーア:キケローはトゥスクルムの別荘にふたつのギュムナシオン(‘something like lecture-halls’, Shackleton Bailey)を持っていてそれぞれをアカデーメイア,リュケイオンと名づけていた.

2017/03/28


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